歯に関するQ&A
小児
子どもの歯は下記のような段階を経てできあがってきます。
妊娠時~出生時
- 歯の芽吹き
赤ちゃんのあご(歯ぐき)の中に最初の乳歯ができはじめる(芽吹く)のは、お母さんのおなかの中にいる、妊娠6週間目(妊娠2ヵ月)頃です。
10週目(妊娠3ヵ月)にもなると乳歯全ての芽(20本)が、赤ちゃんのあごの中で次々と芽吹いてきます。
お母さんが妊娠に気付いて栄養や健康に気を配りだす頃には、もうすでに乳歯のもとはできはじめています。
- 乳歯の形がほぼ完成する時期
妊娠7ヵ月ぐらいには芽吹いた乳歯も少しずつ硬くなり、乳歯を形づくります。
乳歯が子どもの口の中にまだ顔を出す前のこの頃(妊娠7ヵ月頃)に、もう一部の永久歯は胎内の子どものあご(歯ぐき)の中に乳歯に続き、芽吹きはじめます。
6ヶ月~18ヶ月ごろ
乳歯があご(歯ぐき)の中から次々と顔を出す時期
- 個人差はありますが、おおよそ生後6ヵ月前後に、下の前の歯ぐきを突き破って、新たに「乳前歯(乳中切歯)」が生えてきます。子どもによって最初の歯が生えはじめる時期には3ヵ月から半年のずれがあります。
- 最初の乳前歯が生え揃うと、次々と他の新しい乳歯も歯ぐきを突き破って出てきます。
2歳~7歳ごろ
- 乳歯の歯並びが完成する時期
個人差はありますが乳歯すべてが生え揃うのは2歳半から3歳半ごろです。
子どもによって最後の乳歯が顔を出す時期が3ヵ月から半年遅れる場合もあります。
4~5歳ごろは乳歯の歯並びは変わりませんが、歯ぐきの中では永久歯の芽が徐々にその形を完成させようとしています。
- 乳歯が永久歯に生え変わり始める時期
6~7歳ごろになると、いよいよ生え変わりの時期です。生え変わりのメカニズムは、乳歯の下のあごの中で永久歯が生える準備ができると、乳歯の根が吸収され、支えを失った乳歯の頭(口の中に出ている部分)だけが自然に抜け落ち、その後に永久歯が生えてきます。ですから、たとえ金属の冠をかぶせていても、同じように問題なく生え変わります。
個人差はありますが、6歳前後に今生えている乳歯の奥に歯ぐきを突き破って、新たに「6歳臼歯(第1大臼歯)」が生えてきます。子どもによっては、下の前歯が先に生え変わることもあります。
8歳~10歳ごろ
永久歯に生え変わる時期
- 生え変わりの時期に気をつけることは、乳歯が抜けたり、新しく奥から永久歯がが生えてきたりするため、歯並びが一時的に複雑になります。普段は上手に歯みがきをしている子どもでも、磨ききれなくなる時期です。特に6歳臼歯は生えはじめは一段低くなることもあり、歯ブラシの毛先が当たらずにむし歯になることが多いようです。(完全に生えるまでに、6ヵ月くらいかかることもあります。)
歯ブラシの毛先が歯にしっかり当たるように、大人が手を添えたり、仕上げ磨きをしてあげましょう。
- 乳歯がグラグラしているけど、なかなか抜けない場合があります。そんなときは個人差もありますが、歯が動き出してから抜けるまでは意外に時間がかかります。歯がグラグラしていることで、食べにくい・たびたび出血するなどの日常生活に不都合が生じない限り、時期を待ってもいいのではないでしょうか。
ただし、永久歯がすでに歯ぐきを破って生えだしている場合は、乳歯を抜いて永久歯の生える場所を確保するとスムーズに生えることが多いようです。この場合には、一度歯科医院で相談しましょう。
- 「乳歯はどうせ生え変わるから」とついついおろそかにされがちです。でも、生えて間もない歯は未熟でやわらかく、むし歯になりやすいのです。歯みがきとともに食生活にも気をつけて、永久歯が生えてくるまでに、お口の中をむし歯になりにくい環境に整えておくことが、永久歯をむし歯から守る秘訣です。
乳歯は永久歯のナビゲーター!!
11歳~13歳ごろ
永久歯の歯並びが、おおよそ完成する時期
今生えている20本の乳歯はすべて生え変わり、その奥に6歳臼歯を含めて新たに2本ずつ、上下左右で合計8本加わって合計28本になります。すべて生えそろうのは12歳から13歳ころです。
18歳~24歳ごろ
親知らずがあご(歯ぐき)の中から顔を出す時期
一番奥の「親知らず」は、生えてこない人もいるのですが、それらが全て生えてくると永久歯は全部で32本です。
なお、「親知らず」が生える時期は17歳から21歳ころです。(大臼歯が口の中に顔を出す時期は、6歳で第一大臼歯、12歳で第2大臼歯、18歳~24歳が第3大臼歯(すなわち「親知らず」)、というように6の倍数で覚えましょう。)
一口に「歯並びが悪い」といっても、乱ぐい歯(叢生)、隙っ歯、歯の数や形の異常から、うけ口(反対咬合)、出っ歯、開咬(前歯が噛み合わない)、など様々な状態があります。
幼児で相談が多いのがうけ口(反対咬合)と指しゃぶり(吸指癖)による出っ歯や開咬についてです。下あごや下唇が突き出て上下の前歯の噛み合わせが反対になっている『うけ口』は、家族的な遺伝要素や骨格的な問題がなければ、前歯の生え変わりに伴い治っていく場合が多いと言われています。これを考えるとよほどのケースを除いて前歯が交換するまで様子を見て、6~7歳頃まで永久歯が生え変わっても反対で咬んでいる場合には、矯正治療を考えましょう。
幼児のおしゃぶりの常用や指しゃぶりなどの習癖が度を過ぎると、歯並びが悪くなることがあります。3歳くらいで止められれば問題が残りませんが、4歳を過ぎても続けていると、指だけでなく舌を上下の歯の間に突き出す癖が出てきます。前歯が前に押し出され、『出っ歯』や『開咬』になっていきます。
また、乳歯の歯並びに見られる隙間は何の心配もいりません。これは正常なことなのです。あとから生え変わる大きな永久歯が余裕を持って並ぶのに必要なのです。
逆に、乳歯が隙間なくきれいに並んでいる子供たちの方が、後々問題となるのです。つまり、乳歯よりも大きな永久歯に生え変わる時にスペース不足になり、乱ぐい歯や出っ歯などになってしまう恐れがあります。
最近、乳歯の歯並びに隙間のない子どもたちが目に付きます。これは、『よく噛んで食事をする』という生活習慣が出来ていないからだと考えられます。あごについている咀嚼筋が発達せず、生まれた後からも生活環境が大変重要な役割を果たしています。
この点を含め、乳幼児の歯並びやかみ合わせの発育を見守り、疑問があればかかりつけの歯科医師や専門医に気軽にご相談下さい。
まず、乳歯の役割には
- 食べ物をかむ。
- 発音(構音)を助ける。
- あごの発育を助け、顔の形を整える。(全身の成長発育促進)
- 永久歯が正しい位置に生える目印になり、またスペースを確保する。
等があります。
乳歯のむし歯を放置すると、
- 十分に噛めないため、偏食になったり消化吸収が悪くなり発育に影響する。
- 正しい発音ができない。
- あごや顔の形が正常に発育しない。
- 脳の発育を遅らせる。
- 永久歯が正しい位置に生えず、歯並びに影響が出る。
- 痛みや見栄えにより心が不安定になりやすい。
- 痛みは夜間に出ることが多く、痛みを止めるために困難を伴う。
- むし歯菌が増えて唾液が酸性になっている事が多いため、永久歯になってもむし歯で悩まされる可能性が高くなる。
等の事が考えられます。
以上の事より乳歯は生え変わるからといって、むし歯は放置せず、気が付いたら早く治療すべきです。
この考えは間違いです。
6歳から12歳ごろまでは永久歯と乳歯がお口の中で同居しています。乳歯のむし歯を放置すると、永久歯のむし歯になるリスクを高めてしまいます。
また、乳歯の奥歯には永久歯が生えてくる場所を確保する役割があり、むし歯を放置することで、永久歯の歯並びに悪影響が出てしまうかもしれません。できるだけ早くかかりつけの歯科医院を受診して下さい。
生えかわりの時期は個人差が大きく2~3年の差があります。
早くに永久歯が生えると、むし歯になるリスクもあり、かえって遅いほうが良いかもしれません。心配な方は歯科医院を受診し、レントゲン写真を撮ることで永久歯の状態がわかります。
- 前の乳歯が既にグラグラと動く場合、何の心配も要りません。そのまま見守っていれば大丈夫です。
- 前の乳歯がほとんど動きが無い場合、何らかの原因で乳歯の歯根(根っこの部分)が吸収(短くなること)されていない事が考えられます。一度、かかりつけの歯科医院にご相談下さい。
通常、歯の萌出は「左右全く同時に」という訳ではないですが、ほぼ同じ時期に前後して出てくるのが一般的です。
前歯がなかなか萌出して来ない原因には
- 歯が先天的に欠如しているとき
- 歯胚(顎骨内の“歯のたまご”)の位置がずれているとき
- 歯根(歯の根っこ)の形態が湾曲しているとき
- 歯が萌出しようとする場所の歯茎が肥厚しているときや骨が厚いとき
などが考えられます。
どちらにしても早い時期に、歯科医院を受診することをおすすめします。
一般
それは不正咬合の状態により異なりますが、色々な不都合が起こることがあります。
- 歯がデコボコに並んでいたり、重なり合っているところには食べ物がたまりやすく、歯磨きをしてもブラシの毛先が届かず歯垢(プラーク)が取りきれないために、『むし歯』や『歯肉炎』、そして『歯周病』の原因になります。
- 口は食物の入り口で、美味しく味わうことには大切な役割を果たすところです。かみ合わせが悪く、十分に食物を咬み切ったり、咬み砕くことができなければ、その後の胃や腸に大きな負担がかかることになります。また良く咬むことにより頭全体を刺激し、脳内の血液の流れが良くなると言われています。
- 上下の歯がうまく咬み合っていない場合、空気がもれたり舌の動きがぎこちなくなり、発音が不明瞭になることがあります。特に出っ歯や反対咬合、開咬では正確な発音をすることが難しいでしょう。
- 口元は顔の表情の上で大変重要な部分を占めています。人間は社会的な動物ですから、話したり笑ったりした時に、口元や歯並びは大切な役割を果たします。きれいに並んだ歯は健康そのもので、積極的な印象を与えます。反対に歯並びが悪いと引っ込み的になり劣等感を持ったりして、その人の性格にまで悪影響を及ぼしかねません。
以上のような歯並びや咬み合わせが悪い場合は元より、悪くならないように予防するためにも、日頃からかかりつけの歯医者さんでの咬合管理と、適切な時期での歯列矯正治療が必要となるでしょう。
あごが外れると口は開いたまま閉じられなくなり、唾液を飲み込むこともできません。
タオルなどで口を押さえ、できるだけ早く、かかりつけの歯科医院もしくは口腔外科を受診して下さい。
次のような原因が考えられます。
- 外傷
転倒してあごをぶつけたり、殴られたりした場合は、骨折している可能性もあります。
- 智歯周囲炎
智歯(親知らず)の周りで歯ぐきが腫れることによって、口が開きにくくなることがあります。
- 顎関節症
顎関節症とは、口を開閉するための顎関節に異常があるときの病名です。
顎関節内には、クッションの役割をする「関節円板」という軟らかい繊維性組織があります。この関節円板が正常な位置からずれてしまうと、下顎の動きが制限されてしまいます。大きく口を開けたりせず、硬い食べ物を避けて安静にして下さい。口が大きく開かなくなってから時間が経過するほど元に戻りにくくなります。
どの原因でも、できるだけ早く口腔外科もしくはかかりつけの歯科医院を受診して下さい。
カクカクと音がする症状は、「顎関節症」によるものと考えられます。
顎関節症とは、口を開閉するための顎関節に異常があるときの病名です。
顎関節内には、クッションの役割をする「関節円板」という軟らかい繊維性組織があります。この関節円板が正常な位置からずれてしまうと、口を開閉する際、「カクカク」や「ジャリジャリ」と音がします。
痛みがない場合は、治療の必要がない事がほとんどです。ただ、症状が悪化して口が開かなくなったり、ごく稀に顎関節内の腫瘍によることもあります。
専門的には口腔外科の受診が必要となる場合がありますが、まずはかかりつけの歯科医院を受診し相談して下さい。
妊婦
基本的に妊娠中に歯科治療が出来ない時期というのはありません。お母さんのからだの状態や胎児の状態を併せて、それぞれの時期(前期、中期、後期)を考慮して治療を行います。
- 妊娠前期の歯科治療(妊娠1ヶ月から4ヶ月)妊娠中で一番不安定な時期であり、過度の緊張や長時間の治療はなるべく避け、応急処置に留めた方が良いでしょう。
- 妊娠中期の歯科治療(妊娠5ヶ月から7ヶ月)中期は胎児、母体ともに一番安定している時期です。この時期に出来るだけ処置を受けると良いでしょう。特に不安を抱かれる方は、可能なら出産後に処置を受けましょう。
- 妊娠後期の歯科治療(妊娠8ヶ月から10ヶ月)過度の緊張、痛み、恐怖感などから不快症状の増加や、早産を招く可能性もあり、この時期の歯科治療も応急処置に留め、出産後に本格的な治療を受けてください。
歯科治療の場合、直接お腹にX線が当たるという事はありませんが、防御エプロンを着用し腹部を遮蔽してX線撮影を受けましょう。
地球上で1年間に浴びる自然放射線量は日本でおおよそ2.3mSvです。デンタルX線写真の放射線量は1枚あたり約0.01mSvです。パノラマX線写真の放射線量は1回あたり約0.03mSvです。
従って、歯科医院でのレントゲン撮影は十分な安全域で行われています。
歯科治療では、原則として妊娠中の患者さんへの投薬は控えます。
ただし、痛みのひどい時は、我慢することで逆にお腹の赤ちゃんに悪い影響を与えることがありますので、産婦人科の先生と相談した上で投薬することもあります。
また授乳中のお母さんへの投薬も出来るだけ控えます。どうしても必要な場合は出来るだけ大切な赤ちゃんへの影響の少ないものを選択し、安全のため母乳を止めていただく場合もあります。
通常量の使用では母子ともに影響がないと言われていますが、担当医とよく相談した上で処置を受けてください。
昔から『子供を一人産むと、歯が一本抜ける』と言われてきたように、歯を悪くする原因の一つに妊娠があげられてきました。この原因は、おなかの赤ちゃんに母体のカルシウムが取られてしまうからだと信じている人が多いようです。
妊娠中にむし歯にかかりやすいのは事実としても、原因はどうやらもっと別のところにありそうです。
妊娠すると食生活をはじめ生活全般が不規則になるため、口の中が汚れやすくなります。つわりなどの影響で、食べ物がかたよることもあるでしょう。ホルモンの関係でだ液も酸性になりがちです。また、身重で動きが不活発になり歯みがきなどが怠慢になり、歯垢がたまり不潔になります。その上、一度にたくさん食べられないため、ついつい間食も多くなる。実はこれらがむし歯になりやすくなる原因なのです。
つまり、食事のかたよりと不養生の結果、むし歯菌が暴れだしたと言えます。なるべく偏食しないでバランスのとれた食事をし、歯みがきを励行して口の中を清潔に保つようにしましょう。
一般的につわりが見られる時期(4~7週)に乳歯はあご(歯ぐき)の中に芽吹きます。つわりがひどくても、それだけで赤ちゃんの歯に悪い影響をおよぼすことはありません。
ただし、お母さんがつわりによる食欲不振等により十分な栄養を摂らない(あるいは摂れない)と、赤ちゃんに下記のような影響が出る場合があります。
- 体重が増えにくい。(成長がやや遅い。)
- 固くて強い歯がつくられにくい。(むし歯が多発することがある。)
- あごの成長が十分でない。(歯並び、噛み合わせが悪くなることがある。)
入れ歯
必ず入れ歯をはずして、ご自分の歯と入れ歯も丁寧に磨いてください。
練り歯磨きは使わないでください。長い間にすり減ってしまいます。
歯ブラシはできれば「入れ歯用のブラシ」が磨き易いです。水で流しながら、外側・内側を丁寧に食べかすなどを落としていきます。特に針金などが付いてい るところは汚れがたまりやすいので、よく清掃してください。内側のへこんだところにもよく汚れが残ります。汚れが残ったままですと、本物の歯のように「歯石」になってしまうこともあります。こうなっては歯科医院で削り取ってもらわなくてはいけなくなります。
また、入れ歯を洗うときに落として割ったり、小さな入れ歯だと流してしまうことがあります。できれば水を張った洗面器などの上で洗うと安全です。そして、ある程度の間隔で入れ歯の洗浄剤も使った方が良いです。
入れ歯の清掃と共に、自分の歯が残っている場合は歯もきれいに磨いてください。特に入れ歯の針金のかかった歯は汚れが残りやすく、歯周病も進行しやすい ので丁寧に磨いてください。1本だけ残っている場合などは前後の部分を磨きにくいので帯状に切ったガーゼを巻きつけたりして磨くのも良いでしょう。
なお、入れ歯をはずして置いておく場合は、水か入れ歯の洗浄剤につけて保管してください。あまり乾燥させない方が良いです。間違えても、ティッシュやみかんの皮に包んでおいてはいけません。よく捨ててしまいますからね!
基本的には、寝る時ははずし、入れ歯はきれいに清掃して(別項参照)水や入れ歯の洗浄剤につけておいてください。そうすることで、圧迫されていた歯肉を休めてあげて下さい。
でも、状況によっては寝る時にはずせない場合もあるかもしれません。例えば下の歯がほとんど残っていて、上の歯は1本か2本くらいしか残っていないような場合、寝ている間に無意識のうちに噛みこんだりすると残った歯や歯肉にダメージを与えてしまう事があります。
また、特殊な入れ歯ではずしたまま噛んでしまうと損傷してしまうものもあります。その他、入れ歯をはずして寝ると、のどの奥まで乾燥してしまって夜中に数回目を覚ます、等々はずして寝られない事もあります。その場合、できることなら、夕食後歯磨きをして、そのまま寝るまでははずしておく、それも無理ならせめてお風呂に入っている間だけでもはずすなど、どこかで歯肉を休めてあげてください。
ただし、小さなはずれやすい入れ歯などは、寝ている間にはずれて飲み込んでしまう危険性もありますし、特殊な入れ歯では長時間はずしていてはいけない場合もありますので、一度かかりつけの歯科医師に相談するようにしてください。
介護
通常、我々健康な人が口から飲食物をとると、食道を通って胃の方に流れていきますが、間違って気道の方に飲食物が入りかけると、咳反射によって吐き出し、気道に異物が入るのを防ごうとします。
しかし、物をうまく飲み込むための嚥下反射と物が誤って気道に入ってきた時に、それを吐き出す咳反射が衰えている高齢者では、気道に唾液や飲食物が入り込みやすく、これが肺炎を引き起こす原因となり、これによってかかった肺炎を「誤嚥性肺炎」と言います。
肺炎という病気は日本では死因別死亡率の第4位を占め、その肺炎で死亡する人の9割が65歳以上の高齢者が占めるというデータがあります。
誤嚥自体は反射機能が劣ってきた高齢者にとって防ぐこと(治すこと)は難しいですが、臨床実験から誤嚥してしまった唾液などの異物ができるだけ細菌などに侵されていない方が肺炎を引き起こしにくい、または重篤な肺炎になりにくいという結果が出ています。
口腔内、特に高齢者の口の中は衛生状態が劣悪であることが多いと言われています。口腔ケア(口腔衛生状態を改善してあげること)が、誤嚥性肺炎の予防、または重症化を防ぐ意味で大変重要になっています。